〜いずれは皆の集まる大海に広がる〜
本文へジャンプ 2006年02月11日update 

 


【しずく】九滴目

2005年08月01日降下


番外編vol.W『グランブルー』

崖を見れなかったのは正直残念だったが、次回への楽しみを残せた。
それでもこの大自然で素晴らしい経験をすることが出来たのは思いがけ
ない収穫だ。さあ、午後からは待ちに待ったイルカちゃんだ!帰りの
7.5Kmも頑張ろう!!

ゆっくりと下り坂を駆け下りて、バンガローに到着したのは正午くらい
であった。着替えもそこそこに早速持ってきた携帯バーナーに火をつけ
お湯を沸かした。
 
 《LUNCH MENU》
@ ブロッコリーとゴルゴンゾーラチーズのパスタ
A ミートソース缶で作ったリゾット

両方とも炭水化物であるが、15KmRUN & イルカセッションを
考えるとこのくらい摂取しとかないとね。

イルカ船のシリウス丸の船長、大森さんが車で迎えにきてくれたのは
午後2時くらいで、ウエットスーツ(スプリング)に着替えた後、フィン
(足ヒレ)とゴーグル、キャップ、水中カメラ等のみを持ち港へ向かった。
今回の8人乗りの小さな船には、他で来ていた女の子4人組が乗り合わせ、
事前にイルカと接するにあたっての注意事項が説明された。

@ イルカには絶対触ろうとしない事
A イルカの嫌がる行為はしない事
B 子供のイルカを追いかけない事  など

そう、この島のイルカはあくまでも野生のイルカ達。
そんな彼らは容易に触らせてくれないし、彼らがこの地域に住み着いて
いるのは人間達からのストレスが最小限に留まっているからなのだ。
この島は大々的な観光PRをしないし、宿泊施設も100名前後を超えない。
それはイルカ達と昔から共存してきた村民の方々のルール。
我々の身勝手な行動でそれは崩してはならない。

イルカ船は港から出て、沿岸約30mくらい沖を島を半時計回りに
勢いよく進みだした。我々は装備を装着し360度イルカの背びれを探した。
通常の装備はシュノーケル&フィンなのだが、シュノーケルは非常にウザイ
ので自分はいつものプールスタイル(水泳キャップ&ゴーグル)&フィン&
ウエイト3Kを装備した。万全だ!!しかしこんな格好してるヤツは他の
船にもいない…

すると、
「あっ!イルカ!!」
3〜4頭の背びれを発見。早く飛び込みたい気持ちを抑え、大森さんが
イルカの進行方向に船を着けてくれるのを待った。
「イイよ!入って!!」
大森さんの声で皆あたふたしながら、でもイルカを驚かさないように
そーっと入水した。
 
息を思いっきり吸込んで一気に潜る。
視界は15mほどのディープブルー。
周囲を見渡してもイルカは未だ居ない。
しばらく息を止めて水深1mでホバリング…
「来た!!」
10頭ほど!
更に深くイルカ達の深度まで潜ると、うわぁ〜〜〜!!
2〜3頭は自分のわずか1m横を泳いでいる!
この群れ中の1頭の目は今でも忘れられない。
優しく澄んでいて、でも何処か冷めたような目。
10mほどであるがその距離をキープしてイルカと並んで泳いだ!!
が、さすがにくるしい…。
呼吸のために海面に出で下を覗くとイルカの群れは既に遠くに離れていって
しまっていた。諦められずに追いかけようとすると船上から、
「いったん上がろう!」
大森さんが手を振っている。最後に自分が上がった時、船上は興奮の嵐。
当然だ!興奮しすぎて殆ど周りが見えなかった。他の7頭くらいは何処に
行ったんだ?すると大森さんが、
「谷内さんの周りにイッパイ居たね!」
って、後ろまで見る余裕全く無かった…。
興奮の中、船は次のイルカを求めて進みだした。

この御蔵島は〈おわんをひっくり返した形〉と言われている。
島の周囲全てが100m以上もの海食崖になっており、雨の降った後は
その崖に数十本もの滝が現れる。昨夜の雨が我々にこれを見せてくれた。
素晴らしい!

やがて島の反対側まで来た頃、100m先に新たな群れを発見!
今度は落ち着こう。
うわっ沢山いる!背びれだけで10頭くらいはいる。
今回も慎重に群れの前でチョッと潜って待機。
「来たぁ♪」
沢山いる!20頭くらいはいる!!
お母さんイルカの下に小さなイルカも寄り添って泳いでる。
「あっ〈しゃくれ〉だ!」
朝、VIDEOで見たイルカ。確かにしゃくれてる!
イルカの泳ぐ方向に一気に潜った。
ふと見ると、1m前に2頭のイルカがコチラを向いて停まっている。
ほんの5秒。凄く長い時間に思えた。
ニラメッコ?イヤ、そんなもんじゃない。
明らかに、あっきぃという1個体をこの2頭が観察している。
さっきの冷めたイルカの目とは違う。
この間、チョッとだけお互いの興味心というところで
コミュニケーションが取れた気がした♪

機嫌が良かったのか、彼らは通り過ぎずに10分ほど
我々の周りで遊んでくれた。
一度呼吸をしに浮上した際、海面近くにウミガメが泳いでいるのを発見。
普通、それだけでも感動なのだが下には沢山のイルカがいる!
そう思うと写真1枚だけ撮って、再び深呼吸して急いで潜ってしまった。

海の中には夢の世界があった。
自分が潜りながらくるっと回ってみると、子供のイルカが付いてきたり
気がつくと自分が沢山のイルカ達に囲まれていたり。
やがて群れは一斉に1方向に泳ぎだしたのを見てしばらく付いて泳いで
みたが、その20頭ものイルカが揃う光景は圧巻!!
まさに至福の時だ。

この後も1つの群れと遊んでから帰港した。
翌日の午前中も1回ドルフィンダイブしたので、計7〜8回
潜っただろうか。
その1回1回の出会いは忘れられない経験であったし、
その光景は鮮明に覚えている。
ただ、毎回「夢見心地」であった為か、感動が頭で処理出来切れないのか、
経験したことは間違いなくリアルなのだが、どこか映像の世界のような
錯覚にもなった。

土日の現地1泊2日の御蔵旅は充実のまま終わり、帰りのフェリー
で少しずつ離れる島の姿を見ながら色々考えた。

この島は全てにおいて感動的且つ神秘的である。
が、そこで
自然と共存する為にヒトはどうあるべきか?
自然を楽しむ為にヒトは何をしなくてはならないか?
喜びとは?感動とは?
この島にくる度に色々勉強させられる。

『しずく』のヒントがまたここにありました。