ずいぶん久しぶりに、海外旅行に行くことになった。せっかくの機会だから、積極的に異文化に接したい。そう思っていたところ、「スペシャルミール」のことを知った。
スペシャルミールとは、信仰や体質のために食べられる物が制限されている人用の、特別な機内食だそうだ。イスラム教徒には豚肉を使わない料理をお出ししますよ、とかそういう配慮。でも、聞けば特別機内食はそういった人々だけでなく、ぼくらも自由に頼めるらしい。ならば、と飛行機の予約時にイスラム教徒用、ユダヤ教徒用、ベジタリアン用など、何種類かお願いしてみた。 行き先は一番近い国、韓国。でも気分はかなりグローバルだ。
出発前。成田空港に集合した参加者に「飛行機の座席を決める」カードをひいてもらう。参加者には特別機内食のことを話しておらず、カードに描かれたマークを不思議そうにみていたが、旅行への期待でほとんど気にもとめていないようだった。
飛行機に乗り込む直前に、席順を発表した。下の座席図のうち、後列はいわばダミーのマークで、この人たちは普通の機内食。そして前列の6人が"アタリ"の特別機内食だ。
飛行機が離陸し、いよいよ機内食が運ばれてくる。特別機内食は普通の機内食よりも先に運ばれてきた。ちなみに、各マークに対応する機内食は、以下のとおり。
では、各食事内容を紹介。まずは後列の人が食べた、普通バージョンの機内食から。
夕飯にしてはやや軽食と思えるが、そもそも3時間弱のフライトだし、もちろん全員エコノミーの格安航空券なので、このくらいだろう。
次に菜食系の特別機内食。
菜食系のうち、ピュアベジタリアンミールと低脂肪・低コレステロール食はほぼ同じサンドイッチだった。一方アジアンベジタリアンミールは味のついたご飯で、一見「お、アサリ飯か!?」とおもって喜んだが、よくみるとマッシュルームだった。ベジタリアンでアサリってことはないわな。ちなみにぼくはこれにあたったが、普通に美味しかった。
つづいて、宗教系。ヒンズー、ムスリムともに、ピュアベジタリアンと同じようなパンだったが、中身が違っていた。
どちらも、中身に意表をつかれて楽しかった。信仰による食事の制限はベジタリアンよりゆるいため、バリエーションがつくりやすいのかもしれない。食べた人はその味の未体験具合をまた楽しんでいたようだ。
とまあ、ここまででおおまかな雰囲気はつかめたと思う。特別機内食はノーマルな機内食に輪をかけてシンプル&ライトで、美味しいけれどやや味が薄め。
ところが、そういう安易なまとめで終わらせない機内食があった。ユダヤ教徒用の、いわゆるコーシャーミールだ。
他の特別機内食はおろか、ノーマルな機内食をもはるかに凌駕する質と量。一瞬、ビジネスクラス用の食事が間違って出されたのかと思ったが、しっかり「コーシャーミール」と書いてある。この席にあたった人は恐縮しながらみんなにおすそ分けしていたが、味も好評で「この食事だけちゃんとあっためてある」「フルーツも他のより美味しい」「チョコレートケーキが濃厚で絶品!」と大騒ぎだった。まさかの結末。
「これ、書いちゃっていいのかなあ」
無事に韓国入りしたぼくらは、ふと冷静になって考えてしまった。「やっぱり普通の機内食が無難だよなー」と〆るつもりが思わぬ結果になってしまい、正直困惑してしまう。だってそもそもコーシャーミールって、普通の調理方法と違うから何倍もコストかかっているはず。なのにこの差を知ったら、みんなコーシャーミールを頼んじゃうんじゃないか。
誰かに迷惑をかけてまでやることでもないので、この報告をお蔵入りしようかと悩み、帰国後にノースウエスト航空にメールで「迷惑でしたら公開しませんので、遠慮なく言ってください」と打診してみた。ところが、「問題ないですよ」との答えが来る。え、そうなの?さすが世界を飛び回ってる会社だ。懐の深さが尋常じゃない。
ということで、「特別機内食くらべ」は、思いもよらぬ結果になった。ただ、ソウル行きのノースウエスト航空でそうだっただけで、他は違うかもしれない。ともあれ、飛行機の中でいろんな文化に触れることができたのは成果だったと思う。思いつきのわがままに対応してくれた、ノースウエスト航空の方々に、感謝いたします。